裁判例から考える)
・A保険会社(損害賠償)事件 (東京高裁:H17.4.20)
上司が次のようなメールを本人のみならず職場の十数人にも送信した行為が問題となった事件。
@「意欲がない、やる気がないなら会社を辞めるべきだと思います。当SCにとっても会社にとっても損失そのものです。あなたの給与で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の業績を上げますよ。本日現在、搭傷10件処理。Cさんは17件。業務審査といい、これ以上当SCに迷惑をかけないで下さい」
Aいまだに始末書と「〜〜病院」出向の報告(私病? 調査?)がありませんが、業務命令を無視したり、業務時間中に勝手に業務から離れるとどういうことになるか承知していますね」
B「本日、半休を取ることを何故ユニット全員に伝えないのですか。必ず伝えるよう言ったはずです。我々の仕事はチームで回っているんですよ」
裁判所は、当該メールを侮辱的言辞と受け取られても仕方のない、名誉感情をいたずらに毀損するもので、指導・叱咤激励しようとの送信目的が相当であったとしても、その表現において許容限度を超え、著しく相当性を欠くもので、不法行為を構成すると判断しました。
問題点の把握)
〜 たとえ指導であっても、
・相手のキャリアや人格を否定する。
・職場における存在自体を否定する。
・不可能を強いるようなもの。(ex:到底達成不可能な営業ノルマを課す)
・行為者が相手に対して抱いていた嫌悪感に基づくものである。
・相手の立場や感情に配慮することなくされる。
等々の場合は、大きな心理的負荷が加えられているとして違法性が認められています。
しかし、事業を展開していく上において上司から部下になされる叱咤激励、叱咤督促は不可欠です。これらをすべて排除した会社など、とても存続しえない、ともいえます。
明確は判断基準はありませんが、部下を叱る場面においては上記の「問題点の把握」を念頭に置くなど、一時的な感情に流されないことがポイントでしょう。
そのためには…やはり日々の意識付けが重要になると考えます。
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